私はデザインをするのが好きです。
刺繍をしているときは穏やかで楽しい気持ちになりますが、デザインをしているときはもっとワクワクするような熱い気持ちになります。
デザインが突然パッと閃いて、形になることはありません。
むしろ、日常の中でふと気づくアイディアの断片から始まることがほとんどです。
気づきのきっかけは、通りすがりの人の着こなしや庭先の植物、買い物中の発見、さらには刺繍以外のアートや工芸品に触れることが多いです。
たとえば、「通りすがりのおしゃれなマダムに似合うアクセサリーを作りたい」「今日の私の服装にはこんなデザインがぴったり」と想像することがあります。
ほぼ妄想のようなものですが、「この人のために」とモデルが決まると、ブレずに考えられる気がします。
これが、私にとっての発想の大元になっています。
日常からのインスピレーション
植物の形や色の美しさには、デザインの細かいディティールに迷ったときにとても助けられます。
ショッピング中には、デザインをどのようなアイテムに仕立てるかのヒントを得ることがよくあります。
また、アートや工芸品は目の保養としてとても大切です。
素晴らしいものを作りたいと思うからこそ、まず素晴らしいものを知ることが必要だと思っています。
作品を見て、そこに込められた作者の努力や苦労を感じると、自分ももっと頑張ろうと背中を押される気持ちになります。
レッスン用デザインの考え方
レッスンやキット用のデザインをする場合、見た目の美しさだけではなく、学ぶ目的や難易度、学んだことをどう創作活動に活かせるかを一番最初に考えます。
実際の生徒さんたちを思い浮かべながら、これまでの課題を振り返り、無理なく新しい発見をしてもらえる内容を目指します。
次に、「何に仕立てるか」を決めます。
その仕立て方法が生徒さんにとって挑戦しやすいものか、また、これまでのアイテムと差別化できるかどうかなどを検討します。
コンセプトと仕立てを決めてから、ようやく刺繍のデザインに取り掛かります。
そうすることで、自然とできることが絞られ、限られた中から最善の形を追求できるようになります。
試作と改善を重ねて
デザインの過程では、試作と書き直しを何度も繰り返します。
たった1mm以下の違いにもこだわり、素材の色も何通りも試して、最も納得のいく組み合わせを見つけます。
現在、日本ヴォーグ社さんとのコラボで進めているリュネビル刺繍のオンラインレッスンでは、形になるまでに1年半以上かかりました。
図案線や色の選定に加えて、今回はカルトナージュの仕立てを取り入れたため、わかりやすく教えられるよう自分自身で技法を整理するのにも時間が必要でした。
テストのために写真立てを何度も作り直し、失敗を重ねながらようやく納得のいく形にたどり着くことができました。
想いを込めて、、、
レッスン用の作品は、自分のため作品とは異なり、生徒さんたちが作る喜びを感じ、新たな創作の発見につながるものであってほしいと願っています。
形のない想いを、どう見た目と共存させるか。それがこの仕事の最も難しく、そして一番の醍醐味だと感じています。
だからこそ、デザインを考えるときは心が燃えるような気持ちになるのです。
このように気持ちをたくさん込めて作ったオンラインレッスンが、いよいよ正式リリースまであと1週間となりました。
現在、編集や撮影に携わるプロフェッショナルの方々とともに、最後の仕上げに取り組んでいます。
一つのレッスンにこれほど手間をかけられること、監修する講師として、とてもありがたく感じています。
そして、一人でも多くの方に楽しんでいただけることを心より願っています!