パリの刺繍と北斎漫画

刺繍が生んだ物語。友人作家が紡いだ、北斎とリュネビル刺繍の世界

先日、刺繍作家の友人・下村小百合さんが出版した新刊を読みました。
ページをめくるたびに、「刺繍には、物語を書きたくなるほどの力があるんだ」としみじみ感じさせられる、とても素敵な一冊でした。

この本は、リュネビル刺繍作品の写真を挿絵に添えた“物語”と、
作品づくりの裏側を語るエッセイの二部構成になっています。

前半には、葛飾北斎が生きた江戸時代を背景に、
刺繍作品からインスピレーションを受けて紡がれた 3つの物語 が収録されています。

挿絵に使われているのは、作者自身が制作したリュネビル刺繍の作品たち。
北斎漫画をもとに構成されたモチーフが、ビーズやスパンコールによって布の上に再現され、
光の粒がまるで「筆致のきらめき」になって物語に命を吹き込んでいるようでした。

後半のエッセイでは、作品が生まれるまでの工程、素材選びのこだわり、
刺繍が作者にとってどんな存在なのか──
丹念に語られた手仕事の背景が、読んだあとの余韻をさらに豊かにしてくれます。


今回の本を読んで改めて思ったのは、
“作者がどういう想いで刺繍と向き合ってきたのか” を知ることで、作品の魅力がさらに立体的になるということ。

小百合さんは以前、パリのオートクチュール刺繍学校「エコール・ルサージュ」での留学体験や、
パリでの暮らしを綴ったエッセイ本を出版しています。

– 公式サイト
パリの刺繍学校(https://parisbroderie.leesworld.info/)

真剣に技術を学びに旅立った、パリでの時間。
そこで出会った素材・文化・人・景色。
それらが今回の新刊の「世界の土台」になっているのだと、読んでいて感じました。

前作と今回の新刊を合わせて読むと、
刺繍への情熱、その裏にある揺るぎない想いが、とても自然に伝わってきます。


この本は 神保町の書店
PASSAGE bis! BOOKS&CAFE (神保町 共同書店) オンライン販売
PASSAGE_RIVE_GAUCHE (日仏学院内 共同書店) オンライン販売

で実際にお手に取っていただけます。

Amazon でも販売中とのことです。

刺繍の優しい光と、昔話のような素朴な世界観。
そこに、江戸・パリ・そして作家自身の物語が重なり、
とても豊かな読書体験をくれる一冊でした。

パリの刺繍と北斎漫画

パリの刺繍と北斎漫画


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