初めてのルサージュの課題

パリのオートクチュール刺繍学校、”Lesage ルサージュ”での初めてのレッスンの日の思い出は、今でも忘れられない出来事のひとつです。

ドキドキしながら、早めに到着した扉の前で、開校時間が来るのを今か今かと待ちわびました。

フランス語で「今日初めてのレッスンだよ、どうしたらいいの?」って伝えるのも精一杯なほど緊張して、

事務手続きの後に目に入った光景は、こじんまりとした教室内にすでに各々の作業を始めている生徒さんたち。

外国人は私だけかなと思っていた予想を裏切って、日本人の方がたくさんいらっしゃいました!びっくりしました。

2クラス11名のうち半分くらいの方が日本人の方でたちでした。

その様子に少し安心しながらも、慣れないフランス語での先生とのやり取りには一抹の不安を感じました。

私が最初に習った課題は、”オートクチュール・プロフェッショナルコース”というもので、

1回3時間のレッスンが50回(計150時間!)のコースを、土日以外毎日通う日程でした。

一番最初に作ったのがこの作品↓ 

ルサージュの課題

「あれ、この作品、私が申し込んだのとちがうのですが・・・」とおそるおそる先生にいうと、

最初は練習にこの絵から始まるのよ、とやさしく教えてくれて私も納得です。

まず手始めに、クロシェ(かぎ針のリュネヴィル刺繍)と針刺繍などの基本的な技術を学ぶサンプル作品的な物から始まります。
(修了までだいたい14回ほどかかりました。)

この作品が終わると、ようやく本番の課題に移ります。

毎回何個かづつのテクニックを学んで、終わらなかった所は家で宿題といった感じで授業は進んで行きます。

先生は生徒の進度に合わせて、個別に教えてくれました。

先生たちは基本的にはやさしい方々ですが、やはりフランス人。個性の強い方もおられます。

みなアトリエでシャネルやディオールといったブランドの作品を手がけている方々で、

教えてくれる技術はきれい!早い!正確!の3拍子揃っていて、尊敬できる職人さんです。

私もいつか先生みたいになりたいな!と密かな野望を持ちながら、刺繍に没頭した充実した毎日を送っていました。


手軽にオートクチュール刺繍を楽しむ為に

オートクチュール刺繍をご自宅で楽しんで頂けるように、揃えるべき道具類をご紹介したいと思います。

*刺繍枠

オートクチュール刺繍は両手を使って作業することがほとんどなので、スタンドタイプの丸い枠があると便利です。角度や高さの調節もできて、作業がはかどります。
もしくは、普通の刺繍枠を工具で机に固定しても使えます。ただ、裏返したりする時はその都度工具を外さないといけないので、少し不便です。
本格的に大きな作品を作るのであれば、四角い刺繍枠と、それを置く刺繍台が必要になります。

*クロシェ(かぎ針)

一番良いのは、私たちが使用している本場のクロシェがいいのですが、
とりあえず試してみられるならば、クロバーさんが販売しているビーズクチュール針というものがあります。
本当のクロシェと比べて扱いやすさは劣りますが、使えます。
あとは、オススメはしませんがレース編み用の細いかぎ針でも代用できます。しかしこれは非常に使いづらいです。

*糸立て

クロシェを使って刺繍する時に、ボビンを固定できる糸立てがあると非常に便利です。
小さな手芸屋さん以外で販売している所は、ほとんどないと思われます。
身近な物で作るとすれば、消しゴムに釘を刺して、糸立てもどきになります。

*糸

フィラガンというオートクチュール刺繍用の糸が一番向いています。
パリのルサージュでも同じ物を使用していて、糸が細く、樹脂コーティングされているため毛羽立ちがなく、生地通りがスムーズでやりやすいです。
手持ちの糸で試されるのであれば、ミシン糸より細めの糸を使用するといいと思います。

*生地
刺繍する生地は何でもいいです。最初は透ける生地をおすすめします。そうすると下側の手が見えるので、わかりやすいです。
私たちがよく使用するのはシルクのオーガンジーで、ポリエステルの物と比べて、人工的な輝きがないのでどんな作品とも合うからです。

*はさみ
はさみは小さい糸切りばさみだったらお好きな物でかまいません。


と、少し上げてみましたがけっこういろいろなものが必要ですね。でも工夫次第で身近な物を利用することから始めれば負担も少なくできます。


パリのオートクチュール刺繍学校、ルサージュの思い出

「ルサージュに行かなければ!」という気持ちになったきっかけは、

昔テレビ東京でやっていた「ファッション通信」でオートクチュールコレクションのランウェイを見たことから始まります。

当時中学生ぐらいだったでしょうか。

初めて見るきらびやかで夢のようなファッションの世界が広がり、

こんな服がこの世に存在するなんて、、、と驚愕を受けたことを今でも覚えています。

ゴージャスな刺繍、キラキラ光る宝石類、見たことも無いようなデザインのドレス、そのすべてが衝撃でした。

なかでも一番の影響を受けたのは、「クリスチャン・ラクロア」のコレクションでした。

巧みな色使いに凝ったデティール、どことなくするエキゾチックな香り・・・

現在はコレクションをやっていないので残念な事ですが、今でも好きなブランドのひとつです。

クリスチャンラクロアのコレクション

その後専門学生の時に「ルサージュ」の存在を知り、

もともと手工芸が好きだったこともあって、「いつかはここで技術を勉強したい!」と明確に思い始めました。

それから紆余曲折を経て、2012年の6月、ついに念願が叶いました!

パリ滞在中のまる1年間、夏休み以外はほぼ毎日教室に通い詰め、

オートクチュール、インテリア装飾、金刺繍など、ほとんどのクラスを受講しました。

渡仏当初は、オートクチュールのプロフェッショナルコースと、その上の2つのレベルのクラスのみ受講する予定だったのですが、

教室で他の素晴らしく美しい課題作品を見たり、実際に自分が技術を習得し作品を仕上げた時の充実感から、

次から次へと受講するクラスを増やしていきました。

ルサージュにいる時に一番勉強になったのは、

オートクチュール刺繍の表現にはタブーがなくて、なんでも自由な発想で作品を作ることができるということです。

世界には様々な技法がありますが、だいたいがその特有のテクニックに特化して表現されています。

その点オートクチュール刺繍は、クロシェ、針・ビーズ・リボン・金刺繍、クロスステッチやレースだってなんでも、

好きなものや思いつきで作品を作ることができるのです。

刺繍した上に絵の具でペイントしたっていいんです。

こんなに自由で新しい表現にチャレンジできるのは、

毎シーズン新しいデザインを求められるファッションの世界に由来しているからだと思います。

自分の発想次第で何でも作ることができるオートクチュール刺繍、一度やったらやめられません。私はどっぷりはまってます。


刺繍留学のために必要なこと

パリにある“ルサージュ”というオートクチュール刺繍のアトリエが運営している学校があります。

私たちはそこでオートクチュールの技術を学んできました。

その為にまず勉強したのはフランス語。

授業は英語とフランス語でしか行われないため、授業の理解をより深める為や生活の為にも必要でした。

「ルサージュに行きたい!行かなきゃしんでも成仏できない!!」と思い始めたのが約7年前ほど。

当時はアパレルで仕事をしており、まずはお給料でフランス語を習いはじめました。

渡仏までの7年間、語学学校(ウサギで有名)で勉強したのは2年間位だったでしょうか。

まったくの無知な状態から初めて、やめる頃にはなんとなくフランス人と会話できるようになり、友達もできるようになりました。

学校の教材を使って、予習したり、復習したり、動詞の活用法を必死で覚えたりしましたが、

勉強するよりも友達と話してる方が有意義にフランス語が身につけられた気がします。

学校をやめたあとも、独学でフランス語を勉強し続け(かなり適当にですが)、フランス滞在中も勉強してました。

一番効果的な独学方法は、

1. フランス語の音声(ラジオ・テレビ・音楽etc)を聞いて、それを書き取る。綴りは適当でも、後から直せばOK。

2. フランス語の音声(ラジオ・テレビ・音楽etc)を聞いて、それをすぐにマネして繰り返す。間違っていてもOK。口と耳をならす練習の為。

受験勉強みたいにテキストを使って勉強するよりも、

生のフランス語を参考にして練習した方がより現代の口語表現になりますし、

変な単語も覚えなくて済みます。(辞書にのっていても全然使わない言葉とか・・・。)

それにお金がかからない!!これが素晴らしいです。

上に上げたオススメ独学方法は初級者の方にはハードルが高いと思うので、

すごく簡単な音声からはじめた方がいいです。並行して教材や学校での勉強をするとより基礎が身に付きます。

フランス語勉強中の方がいらしたら、参考にしてみて下さいね。

Voilà une astuce pour apprendre !


オートクチュール刺繍のクロシェのやり方 その2

オートクチュール刺繍のクロシェのやり方、始まりのステッチの説明を作りました。

画像だけで見るとすこしわかりづらい所があると思いますが、実際にやりながら説明を見ればわかりやすいのではないかと思います。
クロシェの扱い方は前回の説明にありますので、今回は始まりのステッチの動き方を順を追って説明してます。
簡単に言えば返し縫いをしているだけです。

それではどうぞ〜

オートクチュール刺繍クロシェのやり方 始まりのステッチ

次回は終わりのステッチの説明を作ります。
みなさんに見てもらえてるといいのですが・・・。

前回作ったクロシェの基本のステッチ(チェーンステッチ)の説明も、動画風にリニューアルしてみましたので、あわせてご参考下さい!

クロシェのやり方 始まりのステッチ


オートクチュール刺繍のクロシェのやり方

小さな手芸屋さんではオートクチュール刺繍用のクロシェを販売しているのですが、

オートクチュール刺繍が初めての方には、

使い方がわからないからやってみたくても手が出せない・・・、

というお悩みがあるのではと思い立ち、

簡単なクロシェのやり方の図を作ってみました。

まずは、きほんの “き” をご紹介します。

何となく、クロシェのやり方をつかんで頂けたでしょうか?

また時間がある時に、始まりと終わりのステッチのやり方もご紹介したいと思います。

ご質問がありましたらお気軽にどうぞ!