ルサージュ留学の費用

ルサージュに刺繍留学した体験談を、以前のブログや月刊誌ふらんすの連載で読んでくださった方々から、ルサージュ留学についてご相談をいただくことがあります。

今回も、あるお客様からお問い合わせを頂き、滞在費用や学費のことなど、きっと他の方々も知りたいだろうと思って、ブログに書いてみることにしました。

ルサージュに行ったのは10年も前なので、情報が古いですが、生の体験談はきっと何かのお役に立つはずです。

目次

  • ルサージュ留学で知っておきたいこと
  • 留学に必要な期間
  • 学費はいくらかかる?
  • パリの滞在場所
  • ルサージュ留学体験談

ルサージュ留学について

まず知っておきたいのは、留学にはビザが必要になる場合があります。

観光で滞在できる期間を超える留学は、ビザが必須です。

ビザの取得要件は、最新の情報をもとにしましょう。

フランス大使館のホームページが参考になるはずです。

ビザや入学の手配が一人では不安な方は、留学エージェントに相談することをおすすめします。

ルサージュに留学、必要な期間は?

ルサージュのカリキュラムは、短くて6時間から、長いもので150時間です。

習いたいテクニックや、デザイン、予算、滞在可能日数により、カリキュラムを選ぶことから計画が始まります。

リュネビル刺繍を習いたい方がほとんどだと思いますが、フランス刺繍やリボン刺繍、金刺繍のコースもあります。

リュネビル刺繍の体験コースは、12時間のカリキュラムです。

12時間とは、3時間のレッスンが4回ということになります。

1日に2レッスン出席するのは推奨されていないので、平日4日間の滞在期間が必要です。

ルサージュの学費について

カリキュラムにより料金が設定されています。

リュネビルの12時間コースの場合は、440ユーロ(2022/2月時点)です。

料金の中にキット代は含まれていましたが、道具代は別途かかったと記憶しています。

プロフェッショナルコースという150時間のコースは、6600ユーロです。

選択肢によって学費が大きく異なりますから、学費がいくら必要かは、留学する方次第です。

また、学費の他、滞在中の生活費もかかります。

パリに滞在

パリに長く滞在するなら、キッチン付きの貸部屋が便利でしょう。

短い滞在ならホテル、という手もあります。

パリは日本のように治安がいいわけではないので、危険な地域や、ルサージュまでの交通手段もよく調べて滞在ロケーションを決めましょう。

また、レッスンには宿題が伴うので、部屋で刺繍するスペースがあるかどうか?も重要なポイントではないでしょうか。

ルサージュ留学の体験談

私の場合は、2011年6月から丸1年間、フランスに滞在していました。

ルサージュに通っていたのは、バカンスを除いて賞味10ヶ月くらいでしょうか。

平日は毎日1レッスン通い、残りの日々の時間や週末は宿題、バカンス中は観光や夫の実家に遊びに行くというルーティンでした。

ビザはフランス人の配偶者ビザを取得していました。

ルサージュで出会った日本人の方々は、語学学校とルサージュを掛け持ちして学生ビザで来ている方や、ワーキングホリデービザの方などいらっしゃいました。

実際にルサージュで習った課題はこちら。

  • プロフェッショナルコースのオートクチュールとインテリア
  • オートクチュール レベル7、8
  • インテリア レベル1
  • リボン刺繍
  • 金刺繍

留学の申込み当初は、プロフェッショナルコースのオートクチュールだけの予定で考えていました。

通いながら、もっとたくさん習いたいと思って、その他のカリキュラムを現地で申し込みました。

滞在は、治安のいいところで狭くないところが夫の絶対条件だったので、5区の大通りに面したアパルトモンをオンラインで見つけ、渡航前にネット上から1年契約しました。

家賃、生活費、学費含めて、1年の滞在のために400万くらいは貯金していたかと思います。

資金が足りていたのか、余ったのかは覚えていませんが、もっと切り詰めることもできたと思います。

食事は自炊が多かったです。外食は安くないですが、値段に見合った量が食べれるのでコスパは良かったです。

フランスは、普通の食材でもおいしいものがたくさんあります。

パンとチーズだけでも満たされるし、簡単な自炊でも食事が楽しく、通学と宿題ばかりの日々の息抜きになりました。


留学期間、費用は、何をしたいか、どこに滞在するか、余暇も楽しむかで、人それぞれになると思います。

ご自身にあった計画を見つけてみてください♪

ルサージュのホームページはこちらhttps://ecolelesage.com/en/

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ルサージュの刺繍の本

パリのオートクチュール刺繍アトリエ「Lesage」(ルサージュ)の書籍が発売されるみたいです。

刺繍作品の写真集なのか、メゾンの歴史書なのか、内容はわかりませんがさっそくamazonで予約Get !!

洋書だからかなり高いけど、値段に見合った中身だといいなぁ、、、

果たして本当に出版されるのか、きちんと手元に届くのか、期待せずに待たなければなさそうですね!

ルサージュの刺繍の本

Maison Lesage: Haute Couture Embroidery

ハードカバー: 224ページ
出版社: Thames & Hudson (2019/11/5)
言語: 英語
ISBN-10: 0500021538
ISBN-13: 978-0500021538

https://www.amazon.co.jp/Maison-Lesage-Haute-Couture-Embroidery/dp/0500021538/

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パリの刺繍学校

いますぐパリ行きの飛行機に飛び乗りたい、、、
ルサージュ仲間の下村小百合さんの著書「パリの刺繍学校」を読んで、一番こみ上げてきた感想です。
小百合さんの体験談と自分の思い出が重なって、懐かしい気持ちでいっぱいになりました。

「パリの刺繍学校」は、エコール・ルサージュという刺繍学校への留学体験がきめ細やかに記された本です。
オートクチュールの刺繍を数多く手がける刺繍アトリエ「ルサージュ」がそのエコールを運営しています。
ルサージュはフランスでも世界でもとっても有名なアトリエです。ファッションなんて何も知らないような養父でさえ知っていて、嫁の私がそこに通っているということを自慢にしていたくらいです。

私が通っていたのは2011年から2012年のこと。
著者小百合さんの渡仏の時期と前後して、私も同じように毎日の宿題に追われ、初めての海外生活に喜びと切なさを感じ、刺繍をめいいっぱい楽しんでいました。
当時新婚だった私は、結婚式の資金や貯金のほとんどをその時に費やしてしまい、その結果、結婚式は今も挙げないままに、、、試着でもいいからあの時にドレスを着ておくべきだったと少し後悔の念も笑

「パリの刺繍学校」に出てくる先生方の中で、私が一番尊敬していたのが名物(?)フロランス先生。とっても気分屋でキツいけど、刺繍は誰よりも美しく論理的で、彼女に教えてもらえる日はいつも特別でした。

帰国してもしばらくずっと、刺繍中にフロランス先生の教える声がエコーのように頭に鳴りに響いていました。
守護霊のように聞こえていたその声はいつしか消え、今わりに鳴っているのは自分が生徒さんに教える声。
ようやく私も刺繍の技術を自分のものにできはじめたのかもしれません。

フロランス先生との大事な思い出がひとつ。
ルサージュでのカリキュラムが終りに近づいて来た頃、帰国したくなかった私は、思いきって彼女にこう聞きました。
「どうしたら刺繍の世界であなたのようになることができますか?」と。
その返答には思いもしなかった言葉、忘れることはできません。
フロランス先生はいつもの調子でこう答えてくれました。
「ルサージュで先生をすれば?日本人の生徒さんも多いし、ちょうど先生を探しているところだし。あなたは上手だから、仲のいいディレクターに推薦してあげるわよ」
まさかこんな風に言ってもらえるだなんて、とても嬉しくて、まるでフロランス先生から勲章を授けてもらえたように思えました。
結局はそのオファーは家族の都合と英語が必須という理由から申し込むことはありませんでしたが、その勲章が後ろ盾となって、日本で活動を始めて今日までひた走れた気がします。

小百合さんの本を読んで久しぶりにフロランス先生の教える声を思い出し、パリの街並みや空気に触れたい気持ちが高まりました。
ルサージュが憧れの方、刺繍が好きな方、これから留学してみたいという方にはぜひ読んでもらいたい本です。


【パリの刺繍学校】
著者・下村小百合さんのホームページで販売中です。http://parisbroderie.leesworld.info/

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オートクチュールの舞台裏

オートクチュール(高級仕立て服)は手に入れる事はもちろん、その舞台裏を知る機会も滅多にない秘密の世界、、、

一体どんなふうにコレクションが出来上がるのでしょうか?

「signe chanel(サイン・シャネル)」という、シャネルのアトリエをドキュメントしたDVDを最近見ました。

オートクチュールの制作現場が丁寧に描かれていて、何回でも繰り返し見たくなるような興味深い映像作品です。
(オススメしてくれた生徒さんありがとうございました!)

カール・ラガーフェルドのカリスマ性や、実際に洋服を作るお針子さんたちの悲喜こもごも、

コレクション作りに携わる職人たちの人間像が活き活きと描写されていて、

ドキュメンタリー嫌いな私でも楽しんで見る事ができました。

特に印象深かったのが、ギャロン職人(ツイードの縁飾りを作っている人)のお話。

まさかと思うような環境の仕事場で、暗闇の中照明ひとつで夜な夜な制作にあたっている姿や、

人生を達観したような、でもちょっとひねくれた言葉にグッときました。

ルサージュのアトリエも少しだけ紹介されてました。(もっと見てみたかったのに残念。。。)

ファッション・クリエイト好きな方は必見のDVDです。

オートクチュールの舞台裏を知れる貴重な資料になると思います。

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ネットで最初の一部分を見つけました ↓
*オフィスで見ている方注意*音がでます!字幕なしです。


あこがれのルサージュの刺繍

イヴサンローランのオートクチュールコレクションにも使われている「coquelicot」(コクリコ/ポピー)の花の刺繍。

これは絶対にしたい! とあこがれに思っていたルサージュの課題のひとつ。

これがあったが為にルサージュに長い間通ったと言っても過言ではありません。

オートクチュールコースの最後の課題、レベル8「coquelicot」です。

ルサージュの刺繍レベル8

トリを飾る作品にふさわしく、とても豪華で意匠に富んだ作品です。

実は背景の空の部分には、スパンコールやシルク(に似た糸)をびっしりと刺した後、

白い絵の具で霞のようなペイントをしています。

葉っぱの部分などもマーカー(!)でペイントしてより生っぽい感じにしています。

さすが洗濯を考えないオートクチュール!一般常識とはかけ離れた思考も表現されます。

このコクリコのある草原風景、意外とフランスやイタリアの原っぱでも見かけることが出来ました。

小さな白いマーガレットに、赤いコクリコが無造作に野生むき出しで街路に生えてたりします。

日本人にとってはメルヘンな草原風景ですが、

ヨーロッパの人にとってはちょっと懐かしい田園風景かもしれません。

野生のポピー

ルサージュのプロフェッショナルコースでオートクチュール刺繍の基本を学び、

その次のレベル7で刺繍に対する自我、自分は何が美しいと思うかと問う想いが芽生え、

この「coquelicot」で表現の自由さ、斬新さを求めるココロを学んだルサージュでの経験。

オートクチュール刺繍にはタブーがありません。

もちろん技術的にやってはまずいこともありますが、表現方法に制限はありません。

ちょっと前にお客様にもお話ししたのですが、

オートクチュール刺繍というのは、

女性の趣味というカテゴリーを超えた、職人の創り出す工芸の世界とも接する素晴らしい技術なんです。

こんなものがいつか自分の力で生み出せたら素敵ですよね?

継続は力なり、私もいつかとっておきの、そして誰かのあこがれになれるような作品が生み出せたらいいなと思っています。


オートクチュール刺繍ってほんとおもしろい!

オートクチュール刺繍って、胸がどきどきするほど楽しい!

心からそう思えたのは、プロフェッショナルコースの課題を終え、次の新しい課題に入った頃。

「Ravel」という題名の、これぞオートクチュールという内容の作品でした。
クロシェのテクニックもより難易度が上がり、扱う材料も一癖あるものばかり。
とくに、生地が透けないのでまったく表の様子が分からないのが大変でした。
(生地の裏を見ながら刺繍しているので、透けている素材なら何となくどう出来上がったのかがわかります。)

ルサージュの刺繍レベル7

まるで修行のように、どうすればもっと美しく表現できるだろうかと探求しながらの作業。
プロフェッショナルコースの課題のときは言われるがままやっていた課題作業が、
自分らしさというか、自分は何が美しいと感じるかということに向き合いながらの探求作業に変わりました。

「これは普通の刺繍とは何かがちがう・・・、こんな真剣に作業したことなかった!」
毎日少しづつ出来上がっていく作品の出来映えにドキドキワクワク胸が高鳴っていました。
渡仏してから毎日学校と宿題のローテーションで全くといっていい程遊ぶことは出来ませんでしたが、
真剣に課題に取り組む時間は、遊びに勝る楽しさがありました。

「オートクチュール刺繍ってほんとにおもしろい!」

この楽しさ、もっと多くの人に知ってもらえたら、
もっと、もっとおもしろい!


オートクチュール刺繍のテクニック2

オートクチュール刺繍のテクニックをご紹介した前回のブログの続きです。

すでに多くのテクニックを掲載しましたが、まだまだあります。

前回も写真の中のすべてのテクニックはお伝えしきれてないのですが、目につく代表的なものを抜粋しております。

それでは再開です。

ルサージュの刺繍テクニック

1、針(aiguille)・・・
立体的に仕上がるように、中に詰め物(bourrage:ブラージュ)をしたサテンステッチ(passé bourré:パセブレ)。
曲線をうまく描きながらサテンステッチをするのもテクニックの一つ。

2、メタルリボンを使った技法・・・
金属でできた細く、薄いプレート状のリボンを折り返しながら縫い付けています。
この特殊なリボンは日本ではなかなか見つけることができません。

ルサージュの刺繍テクニック

1、クロシェ(crochet)・・・
point tiré(ポワンティレ)という技法で、複数のビーズをワンステッチで刺しています。
このように面を埋める時には重宝するテクニックの一つです。

2、クロシェ
vermicelle(ヴェルミセル・ランダムなステッチ方向で面を埋める技法)のスパンコールバージョンです。透明なスパンコールを色糸で刺繍しています。
それぞれのスパンコールが重なりすぎないように、またぽっかりと空間が空かないようにステッチするのは至難の業です。

写真の赤い花びらの部分は、皮をドレーピングしながら縫い付けています。
こんな素材の取り合わせの妙もオートクチュール刺繍の魅力の一つです。

ルサージュの刺繍テクニック

シルクのような光沢を持つ糸を使って、クロシェのpoint tiréでサテンステッチのように刺繍しているお花たち。

ひとつひとつ立体的なモチーフに仕上げた後、さらに立体感が出るように縫い止めています。

写真から見えないですが、この花の下にも同じ図案の花が刺繍してあり、見えない所へのこだわり(ゴージャス!)もルサージュで勉強した大事なポイントでした。

ルサージュの刺繍テクニック

クロシェと針を組み合わせて、こんなかわいらしい小鳥さんも作ることができます。

*針で・・・
顔の部分のpassé évidé(パセエヴィデ)とpassé remordu(パセルモルデュ)。
同色糸を使ってますが、ステッチがグラデーションするように刺しています。

尻尾はpassé plat(パセプラ・)、カーブを描きながらのサテンステッチ。

胴部分の羽根の黄色い部分は、ラフィアを使ってフレンチノット(point noued:ポワンヌ、もしくはpoint graine:ポワングレン)してます。

*クロシェで・・・
銀糸、ピンクと赤の糸部分はチェーンステッチ(chaînette:シェネット)で埋める技法(remplissqge:ランプリサージュ)を使って、模様を描き出しています。
シンプルなテクニックながら、組み合わせることで複雑な印象を見せることが出来ます。


といった感じで、ルサージュの作品をもとに、オートクチュールの技法をかいつまんで説明させて頂きました。

でも読んでるだけではちょっとわかりづらいかもです。
実際やってみると、「なるほど!こういうことね!!」(「En effet !」)と感じて頂けるのではないかと思います。


オートクチュール刺繍のテクニック1

パリの刺繍学校「ルサージュ」のオートクチュールコースには、レベルごとにテクニックを習得するコースと、そのレベル1〜6に相当するテクニックがまとめられたプロフェッショナルコースという2種類があります。

私はそのプロフェッショナルコース(150時間)をまず受講して、この作品を作りました。
(この課題の前に練習用の課題があります。)

ルサージュの刺繍オートクチュールコース

かぎ針(クロシェ・ド・リュネビル)のテクニックと針刺繍、リボンや飾り紐の扱い方を学ぶ為の課題です。

この作品を参考に、オートクチュール刺繍にはどんなテクニックがあるのか?を細かく説明しますと、、、
(ついでにフランス語で何と言うかも覚えてみましょう!)

ルサージュの刺繍テクニック

1、クロシェ(crochet)・・・
生地の表からチェーンステッチ(chaînette:シェネット)するテクニック

2、針(aiguille:エギュイーユ)・・・
サテンステッチ(passé plat:パセプラ)。糸はシュニーユ(chenille)という毛虫のような糸を使っています。

3、針・・・
グラデーションのサテンステッチ(passé évidé et passé remordu:パセエヴィデ・パセルモルデュ)
刺繍糸とラフィア(rafiia)というかごバックの素材のようなテープを使ってます。

*ビーズを連ねて刺繍しているのはクロシェを使っています。

ルサージュの刺繍テクニック

このように、立体的なモチーフを作ることも出来ます。
糸とクロシェテクニックを組み合わせてデザイン化された葉っぱたち。

ルサージュの刺繍テクニック

1、クロシェ・・・
面をチェーンステッチで埋める技法(remplissage:ランプリサージュ)

2、クロシェ・・・
面をビーズなどで埋める技法(vermiclle:ヴェルミセル)
ビーズの向きが揃わないようにランダムに配置しながらステッチします。この技法はオートクチュール刺繍を一番象徴づける、ユニークな物だと思います。

3、クロシェ・・・
角をしっかりと表現することが出来ます。表からは見えないステッチで方向転換してます。

とりあえず今回はここら辺で終わります。
続きは次回で!


初めてのルサージュの課題

パリのオートクチュール刺繍学校、”Lesage ルサージュ”での初めてのレッスンの日の思い出は、今でも忘れられない出来事のひとつです。

ドキドキしながら、早めに到着した扉の前で、開校時間が来るのを今か今かと待ちわびました。

フランス語で「今日初めてのレッスンだよ、どうしたらいいの?」って伝えるのも精一杯なほど緊張して、

事務手続きの後に目に入った光景は、こじんまりとした教室内にすでに各々の作業を始めている生徒さんたち。

外国人は私だけかなと思っていた予想を裏切って、日本人の方がたくさんいらっしゃいました!びっくりしました。

2クラス11名のうち半分くらいの方が日本人の方でたちでした。

その様子に少し安心しながらも、慣れないフランス語での先生とのやり取りには一抹の不安を感じました。

私が最初に習った課題は、”オートクチュール・プロフェッショナルコース”というもので、

1回3時間のレッスンが50回(計150時間!)のコースを、土日以外毎日通う日程でした。

一番最初に作ったのがこの作品↓ 

ルサージュの課題

「あれ、この作品、私が申し込んだのとちがうのですが・・・」とおそるおそる先生にいうと、

最初は練習にこの絵から始まるのよ、とやさしく教えてくれて私も納得です。

まず手始めに、クロシェ(かぎ針のリュネヴィル刺繍)と針刺繍などの基本的な技術を学ぶサンプル作品的な物から始まります。
(修了までだいたい14回ほどかかりました。)

この作品が終わると、ようやく本番の課題に移ります。

毎回何個かづつのテクニックを学んで、終わらなかった所は家で宿題といった感じで授業は進んで行きます。

先生は生徒の進度に合わせて、個別に教えてくれました。

先生たちは基本的にはやさしい方々ですが、やはりフランス人。個性の強い方もおられます。

みなアトリエでシャネルやディオールといったブランドの作品を手がけている方々で、

教えてくれる技術はきれい!早い!正確!の3拍子揃っていて、尊敬できる職人さんです。

私もいつか先生みたいになりたいな!と密かな野望を持ちながら、刺繍に没頭した充実した毎日を送っていました。


パリのオートクチュール刺繍学校、ルサージュの思い出

「ルサージュに行かなければ!」という気持ちになったきっかけは、

昔テレビ東京でやっていた「ファッション通信」でオートクチュールコレクションのランウェイを見たことから始まります。

当時中学生ぐらいだったでしょうか。

初めて見るきらびやかで夢のようなファッションの世界が広がり、

こんな服がこの世に存在するなんて、、、と驚愕を受けたことを今でも覚えています。

ゴージャスな刺繍、キラキラ光る宝石類、見たことも無いようなデザインのドレス、そのすべてが衝撃でした。

なかでも一番の影響を受けたのは、「クリスチャン・ラクロア」のコレクションでした。

巧みな色使いに凝ったデティール、どことなくするエキゾチックな香り・・・

現在はコレクションをやっていないので残念な事ですが、今でも好きなブランドのひとつです。

クリスチャンラクロアのコレクション

その後専門学生の時に「ルサージュ」の存在を知り、

もともと手工芸が好きだったこともあって、「いつかはここで技術を勉強したい!」と明確に思い始めました。

それから紆余曲折を経て、2012年の6月、ついに念願が叶いました!

パリ滞在中のまる1年間、夏休み以外はほぼ毎日教室に通い詰め、

オートクチュール、インテリア装飾、金刺繍など、ほとんどのクラスを受講しました。

渡仏当初は、オートクチュールのプロフェッショナルコースと、その上の2つのレベルのクラスのみ受講する予定だったのですが、

教室で他の素晴らしく美しい課題作品を見たり、実際に自分が技術を習得し作品を仕上げた時の充実感から、

次から次へと受講するクラスを増やしていきました。

ルサージュにいる時に一番勉強になったのは、

オートクチュール刺繍の表現にはタブーがなくて、なんでも自由な発想で作品を作ることができるということです。

世界には様々な技法がありますが、だいたいがその特有のテクニックに特化して表現されています。

その点オートクチュール刺繍は、クロシェ、針・ビーズ・リボン・金刺繍、クロスステッチやレースだってなんでも、

好きなものや思いつきで作品を作ることができるのです。

刺繍した上に絵の具でペイントしたっていいんです。

こんなに自由で新しい表現にチャレンジできるのは、

毎シーズン新しいデザインを求められるファッションの世界に由来しているからだと思います。

自分の発想次第で何でも作ることができるオートクチュール刺繍、一度やったらやめられません。私はどっぷりはまってます。